お風呂の残り湯で洗濯

汚れが良く落ち、節水にも

2010年にライオン株式会社が行ったアンケートにおいて、残り湯を洗濯に利用する人は東京では72%という結果が出ました。

お風呂の残り湯を洗濯に使うと汚れがよく落ち、水資源の有効利用にもなります。

残り湯を洗濯に使うときのメリットや注意点などをここで考えてみましょう。

油汚れが落ち易い

皮脂などの脂汚れは水温が高いほうがよく落ちます。残り湯は蛇口から出したての水より温度が高いことが多く、皮脂汚れ落としに適しています。

残り湯の温度をできるだけ高いまま保てるよう、浴槽にはフタをしておきましょう。

皮脂よごれの融点は48℃にまで広がっているが,その90%は37℃で溶解して液体となる。
(参考文献『洗剤・洗浄の事典』奥山晴彦・皆川基 編 朝倉書店)

石鹸がよく溶ける

石鹸を充分に溶かして効率よく働かせるには、最低でも20℃程度の水温が必要です。

冬場は水道から出したてだと20℃未満である事も多いでしょう。例えば東京都では、11月~5月の水温平均が20℃を下回っています(2010年度)。

お風呂の残り湯はこのような時期でも20℃以上を保っている事が多くあります。その為石鹸がよく溶け、効率的に洗濯ができます。

東京都水道局「水道水の水温」

高温洗濯が楽にできる

入浴し終えてすぐの40℃以上ある残り湯はそのまま高温洗濯に使えます。

高温洗濯というのは、40℃以上のお湯で洗濯をする事。低温で洗ったときと比べて汚れ落ちがグンとアップします。

高温洗濯をする時は、牛脂や豚脂(ラード)、パーム油主体の「高温タイプの粉石鹸」を使うと更に効果的です。

これらの石鹸に多く含まれるパルミチン酸やステアリン酸といった脂肪酸は、40℃以上の水温があると完全に溶けて抜群の洗浄力を発揮します。

過炭酸ナトリウム洗濯が楽にできる

過炭酸ナトリウム洗濯とは、酸素系漂白剤の主成分である過炭酸ナトリウムだけで洗濯する方法です。

過炭酸ナトリウムの漂白成分である過酸化水素を効率よく発生させるには40℃以上のお湯が必要です。入浴後すぐの残り湯を使えば、新たに給湯器でお湯を沸かさなくても済み、省エネになります。

節水効果

浴槽の大きさにもよりますが、洗い1回分、すすぎ1~2回分の水道水を使わなくて済みます。

水資源の有効利用になり、下水処理場への負荷が減ります。また、水道代の節約にもなります。

残り湯は不潔?

残り湯は雑菌が増えているので不潔という話もあります。異臭がしたり、変色したりしている残り湯は確かに洗濯向きではありません。

しかし、一見きれいで目立った臭いもないなら気にしなくても差し支えありません。ただし、最後のすすぎは蛇口からの水道水を使うのがお勧めです。

残り湯で洗うと黄ばむ? 部屋干し臭が出る?

黄ばみ

残り湯を利用すると、むしろ黄ばみ防止になります。

白い衣類が黄ばむのは、皮脂の酸化が大きな原因のひとつです。水温が高い残り湯は皮脂汚れを落とすのに適しているので、黄ばみ防止になりえます。

衣替えなどで長期間しまい込む衣類も、しっかり皮脂を落としておくと次に出したときに黄ばみや臭いが抑えられます。

部屋干し臭

冷たい水よりも汚れをよく落とせる残り湯洗濯は、むしろ部屋干し臭対策になります。

いわゆる「部屋干し臭」は、衣類に残っている皮脂汚れなどが変質したり、それをエサにして雑菌が繁殖したりして出てきます。よって、衣類の汚れがきっちり落ちていればそれほど臭くなりません。

入浴剤入りの残り湯

セスキ炭酸ソーダ・炭酸ソーダ・重曹などシンプルな成分の入浴剤

洗濯に問題なく使えます。通常の水道水よりアルカリ性が強くなっているので、むしろ洗濯向きです。

色つきの入浴剤

アルカリ洗濯には使わないほうがよいでしょう。長時間の浸けおきのあいだに衣類が染まってしまうかもしれません。

岩塩などミネラル分が多い入浴剤

石鹸の泡立ちがいつもより弱くなるかもしれません。カルシウムやマグネシウムなどミネラル分は、石鹸と結合して洗浄力を持たない金属石鹸に変えてしまうためです。

このような残り湯を使うときは石鹸の泡立ちに注意し、足りないようなら液体石鹸を足して洗浄力を保ちましょう。アルカリ洗濯の場合はミネラル分を気にする必要はないのでそのまま使っても問題ありません。

酸性の入浴剤

酸は石鹸やアルカリ剤を中和して洗浄力を失わせます。使わないのが無難です。

その他

入浴剤パッケージに「残り湯は洗濯に使えません」と明記されているときは、それに従う方が無難です。

どうしても洗濯に使ってみたいときは洗濯中や洗い上がりの様子をよく観察し、問題が出るようならその入浴剤入りの残り湯利用は止めましょう。

残り湯を気持ちよく、効率的に使うために

湯船の湯をできるだけ汚さない

湯船に浸かる前には掛かり湯を充分にし、できれば体を洗ってから入りましょう。

湯船にタオルを浸けない、ゴミや髪の毛が浮いていたら取り除くなども残り湯をきれいに保つために有効です。

入浴後に炭酸ソーダを

風呂に入り終えたら炭酸ソーダを大さじ1杯くらい入れるとpHが上がって雑菌の繁殖スピードを遅くすることができます。ラベンダーやティートリーなどの殺菌効果のある精油をお湯に落とすと香りもよくなります。

普段の風呂掃除を丁寧に

湯船だけでなく、風呂釜やゴム栓もきちんと掃除しましょう。

給水ポンプも定期的にお手入れをします。ポンプ吸い込み口のヌメリなどはブラシや束子でよくこすり、内蔵フィルターは取りだして水洗いします。

洗濯以外の活用法

  1. ひとつ穴式の風呂釜掃除に
  2. 床の拭き掃除や、家の外回り掃除に
  3. 夏の打ち水に
  4. 植物への水やりに
    ※入浴剤入りの残り湯は水やりにはおすすめしません。入浴剤にはナトリウム(Na)や塩素(Cl)が含まれていることが多く、脱水作用によって植物を傷める可能性があります。
2021年12月改訂(2011年12月初出)