ここでは縦型全自動洗濯機での石鹸の使い方について述べます。ドラム式洗濯機での石鹸の使い方についてはこちらをご覧下さい。
目次
洗濯物の仕分け
以下の様な洗濯物は別洗いがお勧め。
特に汚れの激しい物
泥だらけの運動着と白いワイシャツを一緒に洗うと、ワイシャツに汚れが移る恐れがあります。
ウールや絹、繊細な衣類
手洗い、または洗濯機の「手洗いモード」などで丁寧に洗います。
色が出そうなもの
ジーンズ、濃い色のTシャツなどは洗濯液に色が出て他の衣類を染める恐れがあります。特に綿素材の濃い色の衣類は要注意です。
上記以外であっても、濃い色の製品を初めて洗う時は色が出やすい傾向にあります。
水量と洗剤量の決定
水量の決め方
迷ったら水を多めにしましょう。詰め込み気味になるとうまく洗えません。
- 洗濯機の自動計量を利用する。
- 洗濯物の重量から自分で水量を決める
洗濯物を抱えて体重計に乗り、出た数字から自分の体重を引く。 - 洗濯機の蓋の裏側や本体の側面に印刷されている水量を参考にする。取扱説明書で調べる。
必要なら洗濯開始後に水・湯を足す
洗濯を始めた後に水の追加が必要な場合もあります。洗濯物が水の中で回っている様子を見て判断します。
- 縦型全自動洗濯機:洗濯物が水に十分に浸り、無理なく動く程度の水量が適切。
- 二槽式洗濯機:水と洗濯物の重さの比率が約25:1程度。洗濯物が水の中で泳ぐ程度の水量が適切。
- ドラム式洗濯機:洗濯物に石鹸液が充分に染みこみ、泡が充分に行き渡っている状態が適切。
洗濯機に量らせると大抵は「水が足りない」
洗濯機メーカーが「洗える」とする水量は、石鹸洗濯では足りない事が殆どです。
水量に対する洗濯物重量は7~8割程度割り引いて考えます。例:「水○リットルで3キロ洗える」と記載→洗濯物重量は2キロ強に留めるのが無難。
何故水量が少なめに設定されているのか?
洗濯機メーカーが指定している水量は、JISの洗濯性能試験で規定されている模擬洗濯物を使って決定された数字です。
実際の生活で出る洗濯物は、模擬洗濯物と違って形や材質、厚みが変化に富んでいます。模擬洗濯物と同じ重さでも洗いにくいことが多いため、水も多く必要となります。
洗濯物のポケットを点検
ティッシュやハンカチなど、中に入っている物を取り出します。
できればポケットを裏返し、縫い目に入り込んだ砂やホコリを払います。※古歯ブラシを利用すると払い易い。
汚れの酷い洗濯物を予洗いする
使用した布おむつ、油まみれの作業服、泥まみれの運動着など、汚れの酷い物は水で予洗いします。風呂の残り湯の利用もお勧めです。
酷い油汚れにはセスキ炭酸ソーダが、泥汚れには石鹸が適しています。
全ての衣類を予洗いする必要は無い
石鹸洗濯では、全ての洗濯物を予洗いせねばならないと言われることがあります。しかし大抵の場合はそこまでする必要はありません。
部分洗い
部分的に汚れの酷い箇所を石鹸で部分洗いします。古い染みを発見したら染み抜きをします。
- ワイシャツの衿や袖口
- ズボンの裾やポケット口
- 靴下の底
- 食べこぼし
部分洗いの仕方
- 水で濡らして固形石鹸をこすりつける。又は液体石鹸をスプレーする。
- シャツの衿袖汚れや血液汚れには基本のアルカリスプレーを吹き付けて軽く擦っておく。
傷みやすい物、絡みやすい物の下準備
タイツやストッキング、ニーハイソックス、ランジェリーや薄物衣類は洗濯ネットに入れる。
長い紐が付属している場合は軽く結んでおく。例:エプロンの紐、パーカーのフード紐、スゥエットパンツのウエスト紐など。
ブラジャーのパッドや、フットカバー、ミニハンカチなどは洗濯ネットにまとめておく。バラバラに入れると脱水後に取り出す時に見落しやすい。
石鹸の溶かし込み
20℃以上の水を使う
洗濯に最適の水温は30℃前後です(繊維によって若干違いはあります)。最低でも20℃以上の水を使います。
20℃は、「温かくも冷たくも無い」程度。水温がそれ以下だと石鹸の洗浄力が十分に発揮できません。
お風呂の残り湯などをうまく利用しましょう。
石鹸の分量を決める
石鹸の箱に書かれている「標準使用量」を目安に、汚れの種類や状態、水質によって加減します。
洗濯で泡が消え、液体石鹸を追加した経験がある場合はその分を見込んで多めに使います。目安:液体石鹸50mlを粉石鹸25gで置き換える。
低水位で攪拌する
低水位まで水を入れ、粉石鹸がダマにならないように振り入れます。石鹸ネットを利用するのもよいでしょう。
粉石鹸を入れたら、低水位のまま5~10分間運転して完全に溶かしこみます。洗濯機の攪拌力によって時間を調節して下さい。
1.石鹸投入。
2.1分攪拌。
3.3分ほど攪拌。泡の様子が1分の時と比べて、細かくクリーミィになる。
4.洗濯物を入れ、洗濯物の量に見合った水位まで水を追加。
液体石けんの場合
液体石鹸もある程度攪拌して水によく馴染ませておくと洗い上がりがよくなります。
殆どの液体石鹸にはアルカリ助剤が入っていないので、炭酸ソーダを併用しましょう。無ければ過炭酸ナトリウム(酸素系漂白剤)で代用します。
泡立ちが足りない時の石鹸追加
水を足したり、洗濯物を入れたりすると石鹸の泡が消えることがあります。これは石鹸が汚れに対して不足し、失活している(洗浄力がなくなっている)状態です。
液体石鹸を追加して泡を復活させます。。
粉石鹸を追加で振り入れるのは止めましょう。溶け残って黄ばみや臭いの原因になります。
少しずつ液体石鹸を注ぎ、強く撹拌した時に泡立つ状態にします。その後に本格的に洗濯を開始します。
洗濯物を入れたら泡が消えた状態。(石けん不足)
液体石鹸を少しずつ加える。
ある時点から泡が少しずつ復活し始める。
しっかり泡立つまで液体石鹸を足す。
石鹸が充分に足りてしっかり泡立った状態で洗濯を続ける。
洗い
洗い時間は繊維の種類や汚れの程度によって加減します。
- 通常の汚れ:8分程度
- 軽い汚れ:3分程度
- 酷い汚れ:10分程度
攪拌力が弱い洗濯機の場合には時間を増やすと良い。
濯ぎ
洗いの後、脱水してから溜め濯ぎを2~3回行います。濯ぎの間にも脱水します。
1回の濯ぎ時間は3分で十分です。長く濯ぎすぎると繊維が変色する場合もあります。
例:水中の鉄イオンの影響による黄ばみ、水道水の塩素による脱色など。
流し濯ぎは効率が悪いのでお勧めしません。
濯ぎの水温も、洗濯と同じ温度が適当です。あまりに冷たい水では充分に濯げない事があります。
節水設計の洗濯機では汚れが充分に濯ぎ流せない事があります。その場合は水量または濯ぎ回数を増やします。
脱水・干し
脱水時間
長すぎる脱水はシワの元です。化繊や混紡製品は1分位、綿製品は3分位を目安にします。
洗濯機の機種によって脱水性能に違いがあります。洗濯物の様子を見ながら時間を加減します。
干す時の注意
脱水後はできるだけすぐに干します。脱水後の放置時間が長いと蒸れて臭いが出る事があります。
手頃な大きさの洗濯物は、畳んで手の平で叩くか台上で叩きます。叩いた圧力によりシワが伸びます。
石鹸の使用量について
石鹸洗濯に切り替えたての時期は、標準使用量を大きく超える量の石鹸が必要になる場合があります。
それは、本来洗濯で落とすべき衣類の汚れ以外の物に石鹸が消費されるためです。(以下参照)
- これまでの洗濯で落とし切れていなかった汚れ
- 衣類に蓄積した合成洗剤・柔軟剤の成分
- 衣類に蓄積した石鹸カス(金属石鹸、酸性石鹸)
そこで驚いて石鹸を減らしてしまうと、臭いや黄ばみなどの問題が出てきます。
最初は標準使用量に囚われず、「しっかり泡立つ量=適正量」と考えて下さい。余計な蓄積物が洗い流されるにつれ、石鹸の量も減ってゆきます。
参考資料:
「洗濯上手コツのこつ」婦人之友社,1999
吉永フミ他著「新版 被服整理学」光生館,1988