石鹸や洗剤がなかったころの洗浄剤

石鹸の渡来は16世紀

日本に初めて石鹸が入ってきたのは16世紀(1543年頃、織田・豊臣時代)。一般庶民が石鹸を使うようになったのは明治以降です。

国産の石鹸が初めて売り出されたのは1873年(明治6年)、合成洗剤は1951年(昭和26年)に家庭用粉末衣料用合成洗剤、1956年(昭和31年)に台所用中性洗剤が発売になりました。

では、石鹸や合成洗剤がない頃は、人はどうして身体や衣類を洗っていたのでしょうか。

石鹸以前の洗浄剤

最も原始的な方法は、川や泉のほとりでの沐浴による身体の洗浄とともに、洗濯はたたく、踏むという物理的な力で着衣の汚れを取ることであったと考えられています。

やがて人は、植物の灰の灰汁(アク)、米ヌカ・米のとぎ汁、ムクロジの果皮、サイカチのさや・実、ツバキの実の油かす、ダイコンや芋の煮汁などが汚れを取ることを知り、身体や衣類の洗浄に利用するようになりました。

昔の洗浄剤を大きく分けると、以下のように分類できます。

アルカリ

木灰・ワラ灰・海藻灰

灰汁(アク)は、最古の洗剤として紀元前から使われていたといわれ、旧約聖書などに灰汁という言葉がしばしば出ています。

日本でも洗濯には昔から木灰の灰汁が用いられました。江戸時代には、桶に水を満たして灰を入れ、底の栓口から灰汁がしたたるようになった「灰汁桶」が各戸に置かれていて、これを用いてたらいで手洗いしていたようです。

また、石鹸や合成洗剤が普及する第二次大戦後まで、洗浄剤として広く一般に使われていました。

尿、鶏糞(アンモニア)

ローマ時代の洗濯に尿を発酵させて得られるアルカリ性のアンモニアが用いられたことはよく知られていますが、イラン地方の織物師たちは布を尿で洗い、韓国では灰汁のほかに、特に白物の洗濯には尿が一番いいとされ、各戸には「尿溜」が置かれていました。

天然の界面活性剤:サポニン

サポニンには水と油を混ぜたり、泡を立てて汚れを落としたりする石鹸と同じような働きがあります。性質は石鹸(陰イオン性、弱アルカリ性)とは違い、非イオン性かつ中性です。

界面活性作用は石鹸に比べるとかなり弱いのですが、世界には今日でもサポニンを多く含む植物を石鹸代わり利用する民族が多く存在します。

ムクロジ、サイカチ

ムクロジは西日本から、台湾、中国南部、ヒマラヤ、インド北部まで自生し、昔は庭に植えたりしました。その実は羽根つきの玉にも使われており、果皮はサポニンを含み、水に混ぜて振ると泡立ちます。

サイカチはマメ科の落葉高木で山野に自生し、栽植もされますが果実の莢にはサポニンが含まれ、石鹸の代用とされました。

米、大根、大豆など

お米やダイコン、大豆などを煮ると、細かい泡が立って、よく吹きこぼれるれることがありますが、それはサポニンが溶け出しているからです。

油で汚れた食器類をこれらのゆで汁に浸けておくと、洗剤を使わなくても汚れがよく落ちます。

吸着作用を持つ物質

高分子のたんぱく質やコロイド状物質

小麦粉、フノリ、卵白、麺類のゆで汁などは高分子コロイド物質を含みます。これは汚れと結合し、さらに高分子の不溶性物質となり汚れを取り除きます。

この性質を利用し、古代では、稲や麦の茎を干し粉にして髪につけ、汚れや油を吸い取らせて櫛で梳き落としていたようです。江戸末期の洗髪には、フノリ、うどん粉、卵白、ツバキの油粕などが使われ、浮世絵には髪洗いの姿を女性美のひとつとして描かれています。

また、赤小豆や緑豆を細かく粉にし香料を混ぜた「洗い粉」や木綿、絹の袋に、米糠や豆類の粉、うぐいすの糞などを混ぜ合わせた「糠袋」が洗髪や洗顔に使われました。

粘土鉱物

粘土鉱物は多孔質で吸着性や脱色性に優れています。イギリスではフラー土という粘土を19世紀まで羊毛の洗浄に用いてきました。

モンモリロナイトを主成分とする酸性白土は天然の粘土であり、日本でも古くから、洗濯粉として、また洗髪、鍋や釜を洗うものとして日常的に用いられてきました。

2022年5月改訂(2018年5月初出)

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