桐箱3個入り35銭の化粧石鹸

国内初のブランド石鹸

日本には優れた石鹸メーカーがたくさんあります。ところで、国内初のブランド石鹸はいつ作られたのでしょうか。

それは、1890年(明治23年)。花王石鹸が発売したもので、桐箱に3個入って35銭でした。

当時、米1升(約1.5キロ)が6~9銭でしたから、非常に高価な商品でした。ちなみに当時の舶来高級石鹸は1個30~50銭、国産品なら1ダース10~20銭でした。

落合茂著の『洗う風俗史』(未来社)には以下のように書かれています。

『桐箱3個入り35銭の「花王」が発売とともに、「衛生化粧用芳香入艶出花王しゃぼん-色白くうつくしきつやはだとなり、にきび、そばかす、たむし、しもやけ、できもの類、総て一切に奇功あり」といった薬効と「贈答用」を謳ったところからも、化粧品イメージの強い高級品であった。洗濯石鹸が「洗い石鹸」、化粧石鹸が「顔石鹸」と呼ばれたころで、「花王」の商標の着想も、これを端的に表現したものといわれている。』

花王石鹸の創設者:長瀬富郎

花王石鹸の創設者である長瀬富郎という人は、当時の立志伝中の人で、少々変わった人でもあったらしく、伝記も何冊か書かれています。花王の創立と発展の歴史を綴った『男たちの経営』(城山三郎著 角川文庫)では、

『石鹸については、「たかだか石鹸…」と軽視されがちだが、明治時代では「文明開化」を象徴するような工業製品の1つだった。”日本の夜明けをになう新しい人間像”のモデルとして、島崎藤村の未完の大作「東方の門」にも登場する花王石鹸の長瀬富郎…以下略』

と紹介されています。

今なら薬機法違反?

しかし桐箱に入った超高級石鹸。価格にも驚きますが、もっとすごいのはその宣伝文句。

肌につやが出る、ニキビが治るまではまぁ良いとしても、タムシやしもやけ、湿疹類すべてを治すというのは石鹸には荷が重いように思われます。石鹸作りにかける長瀬氏の情熱が、ちょっと行き過ぎてしまったというところでしょうか。

2022年5月

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