大矢氏の《「ウニを守る」を最優先すべきか》への反論

石川 貞二

大矢氏の私に関する批判に反論します。
私は一度も「ウニを守る」などと言っていません。たまたまウニが一番実験しやすい対象だったから材料に使っただけで、守りたいのは全ての生物です。ただ生物の中でヒトに関しては、自業自得だからどうでもいいというような、(人に言わせれば)暴言を吐くことがありますが、ほぼ本心です。ヒトという生物は現在地球上に棲息する数百万種の生物の中で、最も凶悪で陰険で愚かな生物であることは否定できません。

日本近海の合成洗剤による汚染は依然深刻で、私が実験を続けてきた鳥羽湾では0.8~1ppm程度が観測されています。TBTの毒性は合成洗剤が1ppm海水に溶けていると10万倍、0.1ppmで1万倍危険なものになるという実験結果が、鳥羽市にある名古屋大学理学部菅島臨界実験所で得られています。TBTはpptの単位で内分泌撹乱を起こすとい言われている物質です。外因性内分泌撹乱化学物質として現在リストアップされている物のなかで、圧倒的に多いのが農薬ですが、その殆ど全部が合成界面活性剤無しでは使えないのです。

私の実験では急性毒性しかしていません。しかしもっともっと薄い濃度の合成洗剤が、遺伝毒性や慢性毒性(内分泌撹乱を含めて)を持つことは容易に想像できます。しかし実験が難しい、実験できないから安心と言っておこうというのが、あらゆる毒性について公然と言われているのが現状です。

BODに関して、こんな認識しか持っていない人が未だにいるとは驚きです。BODだけを環境の基準にすることは止めるべきだというのが現在の常識です。酸素が欠乏するような環境(コンクリートで固めた川、埋立の護岸)を作りだしておいて、BODが高いのは悪いなどとよく言えたものです!DDTやPCBがどんなに含まれていても、BODとしては0(ゼロ)だと言うこと位知っていてもらいたいものです。

なお、輸入パーム油の85%は食品用、セッケン用は4%に過ぎません。それでも私たちはセッケンもできるだけ使わない事をすすめています。私たちのやってきた運動は、セッケンを使おうというのではなく、合成洗剤を使わないという運動なのです。

2000年11月30日(2000年12月15日 改訂)

《「ウニを守る」を最優先すべきか?》は、2001年7月10日現在、大矢助教授のページが閉鎖されているため、読むことができません。ただし、大矢氏の著書「合成洗剤は本当に有害なのか?」の164ページ以降に掲載されています。

※このコーナーでは、石川貞二さんの文章をそのまま掲載しています。当「石鹸百科」とは異なる見解が含まれていることがあります。