下水処理を妨げる合成洗剤

せっけんは合成洗剤よりBODが高いから、つまり有機物が多いから、環境に対しては合成洗剤より悪いということを、メ-カ-側は宣伝しています。ある地方自治体の公害課長にも、まったく同じことを言う人がいます。この市に住む人も、近くの湖も気の毒なことです。

三島市や富士市の下水道関係者が、団地などでせっけんを使ってもらい、その地域の下水処理場の処理状況を調べています。たしかに、せっけんに切りかえると、処理場に入ってくる家庭排水のBODは高くなりますが、反対に処理後の方流水の方は、合成洗剤使用期間より、ずっとBODは低くなります。

BODというのは、有機質の汚れをあらわし、生物化学的酸素要求量の略で、有機物を微生物が分解するときに消費する酸素の量です。下水処理というのは、微生物が有機物を分解する働きを利用して、汚水を浄化しているわけですから、生物に有害な合成洗剤が入っていると、浄化の能力が低下することは、しごくあたりまえのことです。

処理場に入ってきた合成洗剤は、分解するのではなく、微生物(活性汚泥と呼ばれます)に付着してしまうのです。

下水道、下水処理場の普及が、環境保全・浄化のために目下の急務だという人たちがいますが、下水処理が普及すればする程、せっけんへのきりかえが大切になってきます。

下水処理については、自治体の実例はここにあげた三島市が有名ですが(別の機会に詳しく書きます)、各家庭の排水処理に関しては、合併浄化槽を扱っている友人の証言があります。設置した後も当然管理を引き受けているのですが、放流水の目標値のBOD 20ppmがなかなか達成できないのが多いのに、たまに5ppm以下に処理されて出てくるのがあり、調べてみるとその家は石けんを使っていることが分かったと言っていました。

知人がやっている鳥羽の料亭でも、いつもは自家製の廃食油石けんを使っていたのに、ある日切らしてしまったので合成洗剤を買ってきて使ったら、とたんに合併浄化槽が臭くなり、浄化槽屋さんに来てもらったら「何か悪いものを使いましたね」と言われ、石けんに戻ったら浄化槽も匂わなくなりました。

※このコーナーでは、石川貞二さんの文章をそのまま掲載しています。当「石鹸百科」とは異なる見解が含まれていることがあります。