柳澤両博士の問題提起

合成洗剤は、アルカリ性のせっけんに対して、中性洗剤と呼ばれ、ソープレス・ソープつまりせっけんでないせっけんということで、最初主として野菜・果物・食器等を洗うためと、毛糸洗いのために登場しました。

その頃は「回虫禍を追放するだけでなく、野菜・果物・食器その他をバイ菌や残有農薬から守り、貧弱なわが国の食品衛生を向上させるために」「毒性を有せず、有害な不純物を含有しない」という中性洗剤を、厚生省の外輪団体である日本食品衛生協会が、さかんに推奨していたのです。

1962年1月、柳澤文正博士(当時東京都立衛生研究所臨床試験部長)が、令弟の東京医科歯科大学教授柳澤文徳博士らとの共同研究の結果、医学的な立場から「中性洗剤は無害ではない」とお茶の水医学会で発表し、それが当時の新聞に報道されたため、多くの人たちが関心を持ちました。

この発表から、来年がちょうど20年に当ります。それにしてもいまだに食器はいうまでもなく、野菜や果物まで合成洗剤で洗っている人がいるということは、ただただあきれるばかりです。残留農薬に対して、合成洗剤は、まったく無意味であるばかりか、野菜や果物に浸みこんでしまい、かえって食物を有害にするだけです。

この1962年という年は、日本で初めて合成洗剤が有害であるという発表がされた記念すべき年であるばかりか、合成洗剤を過って飲んで死んだ人が出た年です。

※このコーナーでは、石川貞二さんの文章をそのまま掲載しています。当「石鹸百科」とは異なる見解が含まれていることがあります。