「合成洗剤追放20周年記念の集い」に出席して、感じたことがたくさんありました。合成洗剤追放運動は、少しずつでも進捗しているのか、あるいは停滞してるのかということが、実行委員会でも問題になりました。
私個人は決して停滞はしていないと思っています。なぜなら、私自身運動の成果として、たとえ1ヵ月に一人でも合成洗剤からせっけんに変えていく人がいるという現実を見ていますから、自信をもって断言できます。
運動が停滞していると考える人は、おそらく行政の対応がにぶいことを問題にしているのだろうと思います。そして、そう考えている人の大部分が、滋賀県の「琵琶湖富栄養化防止条例」を高く評価しているようです。しかし滋賀県で地道な運動を続けてきた人の中には、「琵琶湖に続けとは、決して言わないでください」と言う人が多いのです。
20年もやっていて、どうしてこんなに運動が進まないのだろうという意見もありました。でも考えようによっては、20年もこの運動が続いているということの意味の方が重大です。意味のない運動なら20年も続かないし、大勢の主婦の参加も得られないでしょう。リ-ダ-が古くなったという批判がありましたが、このことは次つぎに新しい人の参加があることをあらわしています。それにししても柳澤先生たちの情熱が、運動の火を燃やしつづけてきたということは、まぎれもない事実です。
合成洗剤追放運動は停滞しているのかと聞かれたら、やはり停滞していないと言いたいです。
確かにかつてのようには、合成洗剤追放集会が各地で頻繁に行われるということは無くなりました。私への講演依頼もめっきり減りました。
しかし、この頃は講演をした後で「こんなにひどいとは思っていなかった」という声が昔より多いのです。今みたいな情報社会でありながら、合成洗剤の危険性についての情報は、ほとんど手に入らないというのが実状のようです。
それでもこうして『生活と科学社』が情報を流してくれて、それを読んでくれている人がいる訳ですから、新しく合成洗剤から石けんに変わってくれる人も出てくるでしょう。
柳沢ご兄弟が「合成洗剤は無害ではない」と発表されてから、そろそろ40年が経とうとしています。合成洗剤メーカーのなりふりかまわぬ宣伝(花王1社で年間400億円の広告宣伝費)にも負けず、石けん派生き延び続けています。
「琵琶湖の富栄養化防止に関する条例」は結果論としても悪法でした。
あの条例が出る前は70%を越えていた滋賀県の石けん使用率がどんどん落ちてきて、現在では20%を切るまでになってしまったと言われています。
琵琶湖が死の湖になる日も遠くはないでしょう。『合成洗剤追放20周年の集い』については、このあともしばらく出てきます。
※このコーナーでは、石川貞二さんの文章をそのまま掲載しています。当「石鹸百科」とは異なる見解が含まれていることがあります。