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【日本の石けん運動の歴史】合成洗剤追放運動のそもそもの始まり

1961年(昭和36年)春、東京都衛生研究所臨床試験部長・柳沢文正のもとに、一人...

1961年(昭和36年)春、東京都衛生研究所臨床試験部長・柳沢文正のもとに、一人の中年のご婦人が訪れました。このご婦人の為に柳沢先生は職を追われ、他人から見たら一生を棒に振ったような結果になります。色恋沙汰ではないことは始めにお断りしておきましょう。

一見して胃腸に障害があることを見抜いた先生は、薬剤より食生活が大切な事を話し、キャベツ(ビタミンU)のしぼり汁に胡麻油を少し加えて朝夕コップ1杯づつ飲むようにすすめました(胃潰瘍の方は試してみてください・筆者注)。数週間後再び訪れたこのご婦人を見て、先生はびっくりしました。前と違って顔色が黒くなりシミが増え、疲れた様子でした。「先生のお話の通り、朝夕キャベツのしぼり汁を飲み続け、お蔭様で胃腸の調子はすっかり良くなりましたが、疲れやすくなり顔や手足にシミが増えました。」と言うのです。不思議に思って良く聞くと、「野菜には寄生虫や農薬が多いと言うので、前の晩からキャベツをライポンFの溶液に浸けておき、翌朝それをミキサーにかけ胡麻油を入れて飲んでいました。」と言います。

「ライポンFとは一体なんですか?」と聞いたら、その人はすぐ近くの雑貨屋へ行ってライポンFを買って来ました。先生はこの時始めて合成洗剤を知ったのです。その容器には、厚生省実験証明(1)回虫卵が簡単に除去される。(2)毒性がなく衛生上無害である。と表示されていました。その上厚生省の外郭団体である日本食品衛生協会の推奨までつけてあります。

便利なものができたものだと思ってよく見ると、その成分はアルキルベンゼンスルホン酸ソーダ(ABS)と書いてある。科学者として何故こんなものが無害なのか、疑問を持ちました。早速白ネズミで実験をしてみたら、確実に毒性があることが分かったのです。さらに様々な実験をして、合成洗剤が決して無害でないことを突き止め、同時に実験を始めた令弟の柳沢文徳・東京医科歯科大学教授の実験結果を併せて1962年1月14日、お茶の水医学会に『DBS※に関する研究』と題し「石油系の合成洗剤は決して無害ではない。従って家庭での使用は充分注意しなければいけない。」と発表したのです。これが世界で始めての合成洗剤に対する宣戦布告でした。その後、柳沢文正先生がどんな迫害を受けたかは、次にゆずります。

※DBS=ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム

※このコーナーでは、石川貞二さんの文章をそのまま掲載しています。当「石鹸百科」とは異なる見解が含まれていることがあります。

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