重曹は洗濯には不向き
重曹は洗濯向きのアルカリ剤ではありません。
洗浄に最も適したpHは9.0~10.5とされますが(注1)、重曹のpHはそれより下の8.2。「pHが低く、洗浄用アルカリ剤としての用途はうすい」というのが専門家の見解です(注2)。
重曹を足しても石鹸は減らせない
洗濯する時に重曹を足すとその分石鹸が減らせて環境に良い、と言われる事があります。残念ながらこれは逆効果です。
重曹のpHは8.2。洗濯用粉石鹸のpHは10程度。pH10の石鹸にpH8.2の重曹を混ぜると全体的なpHが下がります。その分、石鹸の洗浄力は下がります。
粉石鹸に重曹を混ぜると良い場合もある
絹やウールを洗いたいが、炭酸ソーダ(炭酸塩)入りの粉石鹸しか手元に無い。こんな時は粉石鹸に重曹を混ぜましょう。
炭酸塩入りの粉石鹸に重曹を加えると、粉石鹸に配合された炭酸塩の一部がセスキ炭酸ソーダに変わります。すると全体のpHが下がります。
pHを下げる(アルカリ性を弱める)ことで、アルカリに弱い毛や絹などのタンパク質繊維の傷みを抑えながら洗う事が出来ます。これは昔から行われてきた方法です。
注1 辻薦著「工業洗浄の技術」(地人書館)より
注2 奥山春彦・皆川基編著「洗剤・洗浄の事典」(朝倉書店)より
2020年12月改訂(2009年11月初出)