界面活性剤とは、油と水を混ぜ合わせるはたらきのある物質ですから、洗剤以外にもいろいろな場面で使われています。私たちの生活に身近なものでは、食品、化粧品、医薬品に使われています。
食品
食品の中では、水と油を一様に混ぜ合わせるため、つまり乳化剤として、界面活性剤が使われています。乳化した食品には、マーガリン、バター、マヨネーズ、アイスクリーム、など、たくさんあります。食べるものですから、安全性の高いものでなければなりません。「食品衛生法」という法律によって、食品に添加してもよい界面活性剤(乳化剤)は、次のものに限られることになっています。
- グリセリン脂肪酸エステル
- ショ糖脂肪酸エステル
- ステアロイル乳酸カルシウム
- ソルビタン脂肪酸エステル
- プロピレングリコール脂肪酸エステル
この他に、天然の乳化剤として使えるものに、植物レシチン(大豆、なたねから抽出されたもの)、卵黄レシチン(卵黄から抽出されたもの)があります。
化粧品
肌につける化粧品にも、界面活性剤がいろいろな形で使われています。乳液やクリームには乳化するために、化粧水には香料や油、薬品などを溶かしこむ(可溶化)ために、ファンデーション類には粉末を均一に分散させるために、それぞれの目的に合った界面活性剤が利用されています。食品の場合と違い、直接体内に取り込むものではないので、規制は食品の場合よりずっとゆるやかです。使用できる界面活性剤は、「薬機法(旧:薬事法)」に基づく「化粧品基準」によって、使用が禁止されていないものなら良いことになっています。
医薬品
界面活性剤そのものが主剤として使われているものと、製薬の助剤として使われているものがあります。
主剤として用いられる例としては、殺菌剤があります。通称、逆性石けんとよばれるもので、塩化ベンザルコニウムなどの陽イオン界面活性剤が使われています。
製薬助剤としては、ビタミンAなどの脂溶性ビタミンを、非イオン界面活性剤のはたらき(可溶化)で水に溶かし、一つの薬剤の中に水溶性ビタミンと脂溶性ビタミンの両方を配合している例があります。また、軟膏では、昔は油っぽくべたべたした軟膏しかありませんでしたが、最近は非イオン界面活性剤を使って、水の中に油を分散させた形の、さらっとして使いやすい軟膏が多く作られるようになりました。食品の場合と同様に、使用できる界面活性剤は限定されています。
産業での利用
界面活性剤は、工業の上でも広く使われています。繊維工業、製紙工業、土木、建築、プラスチック工業、鉱山、金属工業などで使われています。洗浄目的で利用されることもありますが、分散、乳化などの目的で利用されることがほとんどです。また、農業でも、水に溶けない農薬を水に溶かす乳化剤として、界面活性剤が利用されています。私たちの日常生活からは見えにくいのですが、産業のさまざまな分野で、界面活性剤は活躍しているのです。