ニセ科学と石けんの諸問題 -洗浄の科学とシャボン玉石けん-

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「家庭用」軟水器の販売

シャボン玉石けんは1997年頃より家庭用軟水器の販売を始めました。一戸建て用が326,000円、マンション用が143,000円(いずれも税別)。毎月約3,000円の維持費がかかる非常に高価な商品です。

そしてその頃から「硬度分が皮膚を荒らす」と、同社ウェブサイト(ホームページ)や会報で殊更に強調し始めました。 世界保健機構(WHO)のガイドラインでは硬水とは「硬度120以上の水」ですが、シャボン玉石けんのウェブサイトでは硬度80以上の地域を「硬度が非常に高い」としています。

この分布図はシャボン玉石けんが取り扱う軟水器の製造元・三浦工業が提供したようですが(http://www.nansui.jp/detail/detail06.html)、確かにこの地域の一部には高い硬度の水が見られるものの、地域全体で見ればそれ程高い硬度値を示してはいません。正確さを欠いた情報を流布するのは止めるべきです。

軟水器とは・・・

軟水器とはイオン交換樹脂により水道水を硬度ゼロ水にする装置で、元々は工業用ボイラー水用の機械です。三浦工業は「少しでも硬度成分があればそれは『硬水』(だから使いにくい)」と生活水を硬度ゼロにするよう勧めています。同社の宣伝用ビデオやウェブサイトでもアトピーなどの皮膚トラブルが石けんカスのせいであるかのように表現し、石けんカス生成の原因である硬度成分の怖さを語っています。

しかし金属石けん(石けんカス)の人体に対する安全性は既に確立されており、ベビーパウダーや化粧品の原料として広く利用されているのです。そもそも工業用ボイラー水を硬度ゼロ化するのは、そうしないとボイラー内にカルシウムなどがこびり付いて大事故になる恐れがあるからです。そのような工業用の規格を家庭用水に持ち込む必要などありません。

もう一つ重要なのは、軟水器はカルシウムやマグネシウムなどの硬度成分を「ナトリウムと交換する」―つまり、カルシウム、マグネシウムが無くなって、ナトリウムが倍以上になった水にするということですから、飲用に利用する場合はよく知って使用する必要があります。

洗濯での石けんカスは確かに困りものですが、そこで軟水器に走らず洗濯方法をよく見直し、炭酸塩入り石けんで丁寧に洗えばほとんどの問題は解決します。日常生活に困るほど高い硬水地域の方がある程度硬度を下げるために軟水器を使うことには意味がありますが、そうではない軟水地域の一般家庭までがあえて硬度ゼロのナトリウム水を使わなければならない理由が、一体どこにあるのでしょうか。

石けんカスの生成を抑える炭酸塩を排除し、その後で「石けんカス防止のため」高価な軟水装置を販売する。これを「マッチポンプ商法」と呼びます。

森田氏には自著「自然流せっけん読本」で、合成洗剤や一部の粉石けんに以前配合されていた水軟化剤(ゼオライト)について「日本の水は軟水だから必要のない物質である。」と書いたことを思い出してもらいたいものです。

補足:水道水の水質基準の硬度は300以下と定められています。つまり、硬度300以下なら硬度成分による重大なトラブルは起こらないと言うことです。水道水の硬度と石けんに関する専門家の見解は以下の通り。

小島貞男、中西準子著「日本の水道はよくなりますか」(亜紀書房)
http://www.live-science.com/bekkan/data/chinden.html

「粉石けんは、カルシウム硬度が50ppm以下なら、沈殿生成量は0。その後、硬度とともに沈殿生成量は増加する。 しかし、硬度100ppmの近辺での影響はさほど大きくはない。」

丹保憲被仁、小笠原紘一著「浄水の技術」(技報堂出版)
http://gihodobooks.jp/book/3115-5.html

「一般に水道水では硬度(炭酸カルシウム)が100ppmくらいより低ければ石けんのあわ立ち不良の障害を生じることがなく、軟水となったと考えられます。」「日本の水はほとんど軟水ですから、軟水化処理を行う必要がなく、浄水処理は水を清澄にする除濁、除色に重点がおかれています。」

平成16(2004)年度 水道統計 水質分布表(浄水(給水栓等))平均値
http://www.jwwa.or.jp/mizu/pdf/2004-b-04Jyo-02avg.pdf

日本で水道水の硬度(平均値)100以上の地域は僅か6%弱です。

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