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カリフォルニアに於ける設置済みの自動再生型軟水器の使用について

Fawzi Karajeh and Nancy King
Water Recycling and Desalination Branch(水資源リサイクル・脱塩部門)
California Department of Water Resources(カリフォルニア水資源局)
P. O. Box 942836, Sacramento, CA 94236-0001, USA

”塩分規制に関する戦略 − 軟水器交換への補助金制度”
2005年7月8日
サンタ・クラリタ・バレー水道局
San Jose, カリフォルニア

当文書に掲載の情報の一部はRecycled Water Task force's Regulation and Permitting Workgroup (DWR, 2002)(*1)が2002年に発行した白書からのものである。

40年以上に渡り、下水の塩分濃度問題は上下水道関係者間によって議論されてきた。塩分は水の品質を落とし、一般家庭や企業、農業に悪影響を与え、地下水や下水、下水リサイクル水や水道関係の設備にも悪い影響を与える。塩分濃度(Salinity)/全溶含有濃度(total dissolved solids, TDS)とは、水に溶け込んだミネラル塩の濃度を指し、1L中に何mg溶けているかで表されることが多い(mg/L)。ナトリウムが多いと土の透水性が損なわれ、TDSの数値が上がると作物の収量が落ち、塩化物全般が植物にとって毒である。塩類(カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、硫酸塩、そして塩化物など)の排出は環境を悪化させるが、一旦水に溶け込んだ塩は現在の下水処理プロセスでは取り除くことができない。

リサイクル水の最大の使い道は潅漑用水である。しかし従来の下水処理では水中の塩分は除けないため、法で定められた塩化物制限値を超えてしまい、その業者の施設で処理されたリサイクル水は潅漑用として不適格となってしまう。

飲用水のTDS値が高いと言う問題は従来からあるが、イオン交換型軟水器による塩分問題はリサイクル水の商品価値を更に下げ、消費者を遠ざける一因となっている。

同時に、硬水(カルシウム塩・マグネシウム塩の多い水)を嫌って家庭用軟水器を使う世帯がカリフォルニアで増えていることも問題を悪化させている。硬水は健康には特に問題はないが、車や皿に白い跡が残るとか、配管壁に水アカが付く、炊事洗濯で石けんの使用量が増えるなどの不都合を起こす。飲用水中に存在する塩類の多くは自然からのものであるが、同時に農業、産業、そして自治体から川に放出されたものも多い。特に沿岸部や硬度の高い河川(例:コロラド川)から取水している、あるいは人口密度が高い地域では硬度が高い。軟水器、特に家庭用の自動再生型軟水器が、自治体の下水をリサイクルした水の塩類濃度を押し上げていると言わねばならない。

以上のような理由から、関係者間において塩類の発生源で規制できるものはないか調査したところ、家庭用自動再生型軟水器−−自動軟水器・岩塩型軟水器・イオン交換式軟水器−−が数を把握しやすく、効果的な規制対象であることが分かった。軟水器という機械自体に問題はないが、イオン交換樹脂再生に塩化ナトリウム(食塩・岩塩)を使用することが問題なのである。使用された塩は再生作業後に下水に放たれ、下水の塩分濃度を上げるからだ。

問題解決のため、いくつかのリサイクル水製造業者は、担当地域に於ける自動再生型軟水器を禁止している。例えば、アーヴァイン・ランチ水道局(Irvine Ranch Water District, IRWD)では1966年に禁止令を発効している。1970年には the State Health and safety Code(安全衛生条例?)によって自動再生型軟水器の技術規格が制定された。1978年には州法(SB2148, 1978)によって地域ごとの軟水器禁止行為が禁じられた。しかし、いくつかの地方裁判所ではそれらを認めていない。それらのいくつかは異議申し立てにより1992年に覆された。そして1996年および1997年、上訴裁判所(日本に於ける最高裁のようなもの?)は地方裁判所の裁定を支持し、地方に於ける軟水器禁止行為は無効であるとの判決を下した。理由は、すでに州全体で新たな軟水器の規格制定や規制が行われているからというものである。今後、(地方が独自に?)家庭用軟水器を規制するためには、現行の州法を変えなくてはならない。これを受けてIRWDおよびthe Association of California Water Agencies(ACWA)は上院に法案1006(Costa, 1999)を提出した。これはSB2148を修正した物で、自動再生型軟水器規制の骨格を示した物である。そして2003年、下院法案(Assembly Bill)334(*2)「軟水器および水質調整器機」により、SB1006は規制力を弱める方向に修正された。

家庭用軟水器を規制する現行の州法は、the California Health and Safety Code, Sections 116775から116795(*3)に含まれている。これは軟水器に関する最新の法律SB1006とAB334を反映した物である。その内容はおよそ以下の通りである:

1. 今後新たに設置される自動再生型軟水器は、(タイマー式ではなく)イオン交換樹脂の能力(ナトリウムイオン)が限度に近づいた時点で初めて再生作業を行うような自動装置を備えていなければならない。

2. 2000年1月1日より、軟水器は1ポンドの塩で3,350グレインの硬度を除去できる能力があることを第三者機関によって証明されねばならない(訳注:1ポンド=約454g、1グレイン=約17mg/L)。以前の規定値は1ポンド当たり2,850グレインであった。

3. (2.で規定された)軟水器の硬度除去性能は2002年1月1日より塩1ポンド当たり4,000グレインに引き上げられる。

4. カリフォルニア地方水質コントロール委員会によって発布された水資源再生のための要求事項を満たすために「軟水器設置制限および設置禁止命令が必要不可欠である」と独立研究機関が判断した場合は、地域の担当部局はそのような命令を出すことができる。

5. その(独立研究機関の)研究は、(水質改善)要求事項を満たすために取り得る他の手段についても検討し、軟水器の規制と比べ技術的・コスト的にどちらがより実行し易いかを考慮すべきである。

6. その(独立研究機関の)研究では、ある規制がなされた場合にどの程度塩類の排出が減るかをきちんと試算しなければならない。

7. 家庭用軟水器の規制の実行以前に、家庭排水以外の塩類の発生源に於ける規制も技術的コスト的に可能な範囲で実行されねばならない。

8. 今後導入される軟水器規制は、新たに設置される軟水器を対象に行われる。既存の軟水器は「既得権」を持ち、規制外とされる。

9. 2003年1月1日以前にはいかなる規制も採択されない。

これによって、軟水器業界は基準を満たすために新式の軟水器の開発を行い、現在塩1ポンド当たり4,000グレイン(*4)の硬度除去を達成している。しかし、軟水器から発生する塩類は下水リサイクル業界においては未だに大きな問題である。SB1006およびAB334は、法案が施行された以前に製造され設置された既存の軟水器には効力を持たないからである。既存の軟水器は「既得権」で守られており、これまで通りの使用が許されている。また、最高性能の軟水器でも、塩水を下水に流すことには変わりない。現状は改善されてはいるが、しかし更なる代替手段の模索が必要である。

地方部局や州でも、下水中の塩類問題および、同問題に対し自動再生型軟水器が演じている役割を認識し、注目している。

いくつかの地方の水道局や下水局は下水中の塩類を減らす努力を独自に続けている。12,000エーカー(1エーカー=約4047平方メートル)の食用作物栽培農場に潅水用リサイクル水を供給しているモントレー地方水質汚染規制委員会(Monterey Regional Water Pollution Control Agency, MRWPCA)(*5)でも、この問題の調査を行っている。農業のためのモントレー下水再生調査(Monterey Wastewater Reclamation Study for Agriculture)(*6)が5年に渡って行われ、その結果からは特に土質の悪化や収穫量の減少は見られなかったが、しかし農家としては長期に渡って塩分濃度の高いリサイクル水を畑に撒いたときに現れる悪影響を心配している。これを受けて、モントレー地方水質汚染規制委員(MRWPCA)がリサイクル水の水質を調査した結果、リサイクル水に含まれる塩類レベルは既に許容範囲の上限に達しつつあることが判明した。そのリサイクル水の元になった水に含まれる塩類の37%は軟水器(家庭用および業務用)が発生源であることも分かった。
 
州は、自動再生型軟水器による下水の塩類濃度問題について、リサイクル水特別調査団(Recycled Water Task force, RWTF)(*7)に報告書を出させるなどの取り組みも行っている。

*4 理論的には、自動再生型軟水器において1ポンドの塩が除去し得る硬度は6,000グレインである。

*5 塩類抑制のための革新的アプローチについて by Tom Kouretas,Robert Holden, Patrice K.F. Parsons,James Heitzman(いずれもモントレー地方水質汚染規制委員会(MRWPCA)メンバー)

*6 Monterey Wastewater Reclamation Study for Agriculture, Engineering-Science, Inc, (1986), Monterey County Water Resources Agency Library CW-212.この調査はリサイクル水による潅漑が消費者や農業従事者にとって安全かどうかを見極めるために行われた。この調査は以下の項目を含む: (1)リサイクル水で潅水することで、土地に重金属や塩類が蓄積する、あるいは、土壌の透水性を損なうなどの悪影響を土地に与えるかどうか;(2)リサイクル水での潅水が作物の品質や生育、収量に影響を及ぼすか;(3)作物へのリサイクル水使用について消費者の意見は否定的ではないか;(4)リサイクル水は潅水に適しているか、低コストであるか。このプロジェクトの第二次的な目標は: 下水処理がどの程度効果的になされているかを評価し、地域の下水処理施設にきちんとした基準のひな型を示し、本格的規模の下水再生基準を開発し、実地に運用できる経験(?field operational experience)を供することである。

*7 リサイクル水特別調査団(Recycled Water Task force, RWTF)は下院法案No.331(Goldberg, 2001)により結成された(Water code Sectiono 13578)。同調査団はカリフォルニア水資源局(California Department of Water Resources, DWR)により召還され、同水資源局および州水資源コントロール委員会(the State Water Resources Control Board)と保健局(the Department of Health Services)の協力団体として機能する。これら3つの公的団体は上水道に関する計画立案や規制などに主に係わるものである。RWTFはリサイクル水がより安全に使用できるよう努め、その障害となる物事を見極めてDWRに提言を行い、議会に対しそれを報告することになっていた。その報告書のタイトルは"Water Recycling 2030: Recommendations of California's Recycled Water Task Force, June 2003"である。

RWTFは、他の塩素発生源と同様、家庭用軟水器からの排水も地方の担当部局が規制できる権限を持つべきであり、またリサイクル水の塩分濃度を上げないような新たな水質調整器機の研究の支援が必要であると提言している。同時に、地方担当部局は自動再生型軟水器が環境に与える影響を広報などで消費者に分かり易く伝え、旧型の軟水器を(環境に影響の少ない)新型に買い替える際には補助金を出すなどすべきだとしている。RWTFのこれらの提言を受け、下院法案334(Goldberg, 2003)軟水器および水質調整器機について(Water Softening and Conditioning Appliances)が採択された。

下水に流れ込む塩類を減らすため行われている様々な努力を、州では支援している。カリフォルニア水資源局(DWR)はサンタ・クララ・バレー水道局(Santa Clara Valley Water District, SCVWD)が行った試験的な軟水器補助金制度に対し2002年のProject 13 Grantから報奨金を与えた。この報奨金によって1999年以前の効率の悪い軟水器を新しいものに交換した400世帯にそれぞれ150ドルが与えられた。新式の軟水器はタイマーではなくイオン交換樹脂の限界を感知して初めて再生作業を始めるセンサータイプで、より効率的に再生を行うことができ、塩と水の使用量も減る。

 

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