ニセ科学と石けんの諸問題 -洗濯用「無添剤」石けんの問題点-

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「硬度分布図」なるもの

三浦工業のサイトには「硬度分布図別ウィンドウで別サイトを開きます 」と銘打たれた日本地図が掲載され、その分布図中で数県が「硬度81以上」として危険地域であるかのように表示されています。しかし、この分布図にはいくつかの大きな間違いがあります。

まず、水の硬度は県単位という大ざっぱな分け方では測れません。例えば沖縄県沖縄本島について。浄水場で処理される以前の水源の水「原水」に話を限れば、沖縄本島中南部は確かに硬水地域です(硬度200〜300)。この地域は珊瑚礁が海底から隆起してできたので地面そのものが炭酸カルシウムの宝庫です。亜熱帯性気候で台風も多く、その雨で溶かされた地面のカルシウム分が地下水と共に河川へと流れて水の硬度を上げるのです。しかし、石灰岩地域ではない沖縄本島北部(主に赤黄色土で構成されている)では、河川の硬度値は平均30程度です。

沖縄本島の5浄水場出口における水質検査結果に掲載されている硬度値は以下の通りです。(2007年度(一部2006年度)の水質検査結果より)
 
 ・北部  名護浄水場:41  久志浄水場:31(工業用水)
 ・中部  石川浄水場:32  北谷浄水場:70
 ・南部  西原浄水場:32
  
これらの水は全て「軟水」か「中程度の軟水」です(WHO飲料水ガイドラインによる)。そして久志以外の4カ所で沖縄本島27市町村の内23市町村に水道水を供給していますから、沖縄本島住民のほとんどは、軟水を使っているということです。ちなみに沖縄県全体でも、平均硬度120以上(WHOで規定されるところの硬水)が家庭の蛇口から出る地域は約25%、硬度81以上に枠を広げてもその割合は41%で半数にも満たないのです。そのような数字は全体を代表する値としてふさわしいとは言えません。(*1)

次に、この分布図作成に当たって採取した水が調査のサンプルとして適当でない可能性があるということ。この分布図は三浦工業が「三浦工業のボイラー水」をサンプルとして独自に水質検査を行って作成したそうです(分布図下部に小さく但し書きあり)。一般人がボイラー水と聞くと、普通はボイラーの中に入っている水を想像します。そしてボイラー内の水は温められているため水質が変化していることが多く、硬度測定サンプルとしては適当でありません。いや違うちゃんと水道水を測ったと言うなら、「ボイラー水」などと分かりにくい表現は止めて、「水道水」と正しく表示し直すべきでしょう。そして、前述したように同じ県内でも水の硬度値は激しく違うことがあるため、どの地点で採取したのかも硬度値ごとに書き添えるべきです。

一企業の独自調査に少々厳しい要求をするようですが、しかしその調査結果をインターネット上で世界に向けて公開したいならば、これくらいの慎重さは必要です。それができないのなら、世間に誤解を与えかねない中途半端な自社データを公表するより、きちんとした公的データ(*2)を紹介するほうが消費者に対して余程誠実な態度だと言えましょう。

最後に、硬度81以上の水は硬水かという基本的な問題。WHOのガイドラインでは硬水とは硬度120以上の水を指します。60〜120未満は中程度の軟水、60未満が軟水とされています。そして日本の水道水の硬度は平均すると20〜60。他の国の軟水器事情はどうあれ、平均硬度60以下の国には余程の事情がない限り軟水器は必要ありません。

無知ゆえか、それとも故意なのかは分かりません。しかしこのような間違いだらけの数字をもっともらしい地図に仕立てて商売に利用するのは全国の浄水事業担当者に対する侮辱であり、消費者に対する裏切りであると言えるでしょう。

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