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アメリカ軟水器事情 ―サンタ・クラリタ・バレーの塩化物規制―

アメリカの硬水地域では軟水器が必要な家庭も多いようです。そこで問題になるのが、イオン交換樹脂再生時に発生する塩化物濃度の高い排水が引き起こす環境汚染です。

カリフォルニア州などの降雨量の少ない地域では下水をリサイクルして潅漑用水などに利用しており、下水の塩分濃度は1960年代には既に問題になっていました。そして1966年にはカリフォルニア州アーヴァイン・ランチにおいて初の軟水器禁止条例が発効、以後、紆余曲折を経ながらも、軟水器による塩化物排出問題は議論され続けています。

カリフォルニアに於ける設置済みの自動再生型軟水器の使用について

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日本語訳

※尚、翻訳は弊社スタッフによるものですので、専門用語の解釈など間違いがありましたら、ご指摘いただければ幸いです。

イオン交換式の軟水器はイオン交換樹脂の能力が限界に来ると、濃い塩水で樹脂を洗います。こうすることで、それまでに樹脂が捕らえたカルシウムやマグネシウムイオンを再びナトリウムイオンに置き換え、もう一度イオン交換(水の軟化)可能な状態に戻すのです(イオン交換樹脂の再生)。しかし再生作業中に樹脂に捕まるナトリウムイオンは塩水中の一部だけで、残りの塩はそのまま下水処理場あるいは家庭用浄化槽に流れ込みます。ところが現在の家庭用浄化槽や下水処理場は余分に溶けた塩などは取り除く能力がありません。つまり、樹脂再生に使われた塩の大部分は浄化槽や処理場を素通りし、地域の河川などにそのまま流れ込むのです。そしてその地域の水の硬度が高ければ高いほどイオン交換樹脂の消耗は激しいので再生回数が増え、排出される塩の量も多くなります。これは川に住む生き物や、流域の農家にとっては由々しき事態です。塩により水辺の生態系は破壊され、塩分濃度の高い川の水で潅漑された土地の作物は重大なダメージを受けます。現に、ロサンジェルス郡のサンタ・クラリタ・バレーを流れるサンタ・クララ川の水を散水に利用するアボカドやイチゴ農家からは、塩化物濃度が原因と思われる作物被害が報告されています。

更に問題を大きくしているのが、「自動再生」機能です。現在アメリカで最も普及している軟水器は水の使用量の多少にかかわらず、一定期間が過ぎたらタイマーが働いて自動的に樹脂を塩水で洗うタイプで、これらの使用者は硬度が僅かでも上がることを警戒してタイマーを短めにセットして無駄に再生作業を行う傾向があります(必要充分量の2倍の塩が使われているというデータもある)。上記のサンタ・クララ川に流れ込む塩化物の3分の1以上がこうした再生作業により発生しているのです。

塩(塩化ナトリウム)の代用として塩化カリウムを使う方法もあり、これだとナトリウムは排出されませんが、「塩化物」という点では同じなので環境に及ぼす害にさほど違いはありません。下水処理場に塩化物除去のためのマイクロフィルターや逆浸透膜設備を税金で追加することは技術的に可能ですが、それにはおよそ数億ドルが必要となり、地域の世帯当たりの下水料金は現行の4〜5倍に跳ね上がってしまいます(サンタ・クラリタ・バレー市の試算による)。

これらを受け、2003年3月サンタ・クラリタ・バレーは自動再生型軟水器を一般家庭に設置する作業を新品・中古を問わず禁止する法律を施行しました。これに違反した住民は1,000ドル以下の罰金または/および30日以内の懲役が科せられます(事業所が同タイプの軟水器をサンタ・クラリタ・バレー内で設置することは1961年より禁止)。

現在使用中の製品については継続使用ができますが、それが壊れても修理に出すことはできません(返ってきても再「設置」が不可であるため)。また、ロサンジェルス郡衛生局(Sanitation Districts of Los Angeles County)では現在も下水中の塩化物濃度を下げるため、自動再生型軟水器に関する更なる規制や代替製品などの研究を進めています。

サンタ・クラリタ・バレーでは公式サイトに分かり易いQ&Aを作り、自主的に自動再生型軟水器の撤去をする住民にはその費用を負担(*8)したり、他の水質改良手段を紹介するなどして、塩化物排出抑制の努力を続けています。

家庭用軟水器と塩化物について(Q&A)

サンタ・クラリタ市Chloride, Water Softeners, and Residents/英文別ウィンドウで別サイトを開きます

日本語訳

※なお、翻訳は弊社スタッフによるものですので、専門用語の解釈など間違いがありましたら、ご指摘いただければ幸いです。

これ以外でも、パソ・ロブレス(米・カルフォルニア州)ではナトリウム濃度の高い排水は浄化槽や農業に被害を及ぼすとして注意を呼びかけており、 また、いくつかの軟水器メーカーではナトリウムの蓄積は植物に悪影響を及ぼす可能性があるため、散水には軟水器を通さない水の使用を勧めるなどしています。

参照:
パソ・ロブレスサイトWATER SOFTENER ISSUES別ウィンドウで別サイトを開きます
軟水器メーカーサイトHARD WATER - L-2277 To Soften Or Not To Soften別ウィンドウで別サイトを開きます

ノースカロライナ州大学教育公開プログラム(North Carolina Cooperative Extension Service)では硬度250位までなら市販の水質改良剤(packaged water softener/water conditioner 洗濯の前に水に加える。炭酸塩やホウ砂などの混合物)の使用や洗剤量を増やすことで対応可能であり、軟水器を導入するまでもないとの見解です。

参照:Water Quality and Laundry Problems別ウィンドウで別サイトを開きます

硬度の高い欧米では、軟水器を使用する家庭が多く、ホームセンターやスーパーなどで手軽に購入できます。洗濯機や冷蔵庫並に普及しており、一般的に硬度を極限的になくした水を使っているのです。

三浦工業別ウィンドウで別サイトを開きます

欧米のような硬水の地域では、軟水器はホームセンターなどでごく普通に販売されていて、アメリカでは90%以上の中流家庭では軟水器を使用しています。

uki☆uki☆せっけんライフ別ウィンドウで別サイトを開きます

これらの「情報」が事実を正確に伝えているかどうかはさておき、サンタ・クラリタ・バレーでは、一部の住民が自動再生型軟水器を使った結果、税金を投入してまで塩化物対策を取らねばならなくなりました。この事実は、アメリカでも軟水器が洗濯機や冷蔵庫並の家電製品として扱われているわけではないということを示しています。日本とアメリカでは地形その他によって水事情は違うので、この事例をそのまま日本にあてはめることはできませんが、個人が無自覚にたれ流した塩化物が積もり積もって大問題になったということは、しっかりと心に留めておく必要がありそうです。

日本の家庭用軟水器のトップメーカー・三浦工業の製品(「軟太郎」「美肌っ子」)は、サンタ・クラリタ・バレーで禁止されているタイマー式自動再生型。一戸建て型で毎月約10kgの塩化ナトリウム(食塩)を海水に近い濃度に調製して樹脂再生に使用し、下水道や家庭用浄化槽に排出する(2007年10月現在)。そのような塩分濃度は有機物を分解する微生物にも悪影響を与え、家庭用浄化槽などの汚水処理能力を低下させる恐れがある。

*8 軟水器撤去にかかる補助金制度/水質改良装置の紹介例

参照:Chloride in Santa Clarita/英文別ウィンドウで別サイトを開きます

サンタ・クラリタの塩化物について

サンタ・クラリタ・バレーでは、塩あるいは塩化カリウム粒を使用する自動再生型軟水器の設置を2003年より禁止している。自動再生型軟水器を使う世帯は全体から見ると少数派だが、それでも未だに多くの製品が使用されている。自動再生型軟水器からは塩分を含んだ排水が下水道に流れ、それに含まれる塩化物は処理場でも取り除かれず、そのままサンタ・クララ川に流れ込む。川の水の塩分濃度が高まると、下流の農業作物に被害を与える可能性がある。法律で塩分排出が大幅に規制されるため、このままではサンタ・クラリタ・バレー公衆衛生局(公衆衛生局)は排水から塩分を取り除いて処分する施設を新たに建設せねばならず、それには35億5千万ドル以上かかる。そうなると下水料金は現在の約4倍になり、請求額は1世帯当たり500ドルに昇るだろう。

しかし公衆衛生局としては、もっと安上がりで環境に優しい方法によって、迅速に排水に含まれる塩分を減らしたいと考えている。2005年に導入された補助金制度によって、多くの自動再生型軟水器ユーザーにその使用を止めさせることができた。本年(2007年?)は、自発的に自動再生型軟水器の使用を停止し、廃棄する住人に対し、古い軟水器を下取りし、その廃棄処分にかかる妥当な費用全てを公費負担する予定である。

(黄色いタブ)補助金制度情報   自動再生型軟水器に代わる製品紹介

※翻訳は弊社スタッフによるものですので、専門用語の解釈など間違いがありましたら、ご指摘いただければ幸いです。

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