トップページ >>> 「家庭用」軟水器の諸問題 >>> 金属石けん(石けんカス)について
前述したように、水中に溶け込んだ硬度成分であるカルシウム、マグネシウムなどの金属イオン(二価以上の金属イオン)と石けん・合成洗剤が反応して生成されたものが金属石けんです。水には溶けない金属化合物で洗浄力はなく、これが多く生成するほど石けんの界面活性分は失われて洗浄力が低下します。
洗濯では厄介者の金属石けんですが、工業用としては古くから様々な分野で重宝されてきました。例えば古代エジプトの墳墓から発掘された戦車の車軸には、油脂と石灰から作った金属石けん様の物質が潤滑剤として使われていたそうです。19世紀中頃からその利用が盛んになり、第2次大戦後から今日にかけて、プラスチック、顔料、セメント、鋳物、金属加工、潤滑油、医薬、化粧品などの工業分野で、潤滑剤、分散剤、撥水剤、離型剤、触媒、安定剤、殺菌剤などとして必要不可欠な存在となりました。
参考文献:吉田時行・進藤信一・大垣忠義・井出袈裟市 編著
「金属せっけんの性質と応用」 幸書房
ところが軟水器業者にすればそんなことは眼中になく、
水道水に含まれる硬度分は肌荒れの原因や石けんの洗浄力を妨げる石けんカスのもと
シャボン玉石けん「友の会だより」(No.36)
という見解を固持しています。しかし硬度成分が肌荒れの原因ならば、海水浴などとてもできませんし (海水の硬度は約6000。含有カルシウム約400ppm/マグネシウム約1300ppm)、ミネラル成分豊富な温泉や化粧水も肌に悪いことになります(硬度成分と肌については「海外温泉事情」参照)。
実際のところ、石けんカス(金属石けん)は肌にとって非常に低刺激な物質であり、それを裏付ける動物実験結果もちゃんと存在します。
「香粧品原料の安全性再評価」フレグランスジャーナル社/抜粋
※金属石けんは含まれる脂肪酸の種類やその割合により微妙に性質が違うが、上記の実験で使われた「金属石けん」は、色々な脂肪酸の混合物のマグネシウム塩をウサギで皮膚刺激試験を行った結果である。
※ウサギの皮膚はヒトよりも刺激に弱いとされている。
※カルシウム塩についての試験結果は掲載されていないが、マグネシウム塩と同様、問題となるような皮膚刺激性があるとの報告はない。
ベビーパウダーやアイシャドーなど敏感な部分に触れるスキンケアやメイクアップ製品に金属石けんが多く配合されているのも、この様に安全性がきちんと確認されているからなのです。
人工軟水の風呂で石けんを使うといつまでもヌルヌルした感じが肌に残りますが、そのヌルヌルの正体は石けんが分解されてできた脂肪酸です。適度な硬度成分が水中に存在すれば、その脂肪酸は金属石けんになるのでさっぱりとした感触になります。ヌルヌルが良いかさっぱりが良いかは人それぞれですが、金属石けんが「一風呂浴びてすっきり」という爽快感を演出してくれることは確かなようです。
「皮膚は弱い酸性物質で覆われているので、石けんの脱脂力は適当に緩和され、遊離した脂肪酸が皮膚の保護に役立つのである。強い脱脂洗浄力を特色とする合成洗浄剤が広く普及している今日でも、皮膚を対象とする洗浄には石けんがなお優位を保っている理由の一つである。」
辻薦著「洗浄と洗剤」地人書館
「石けんが好まれる理由のひとつは、洗った後にさっぱりした感触が得られるからである。合成洗剤を用いた場合、すすいだ後の皮膚に残留する洗剤の量が、石けんに比べて極めて少ないにもかかわらず、ヌルヌルした感触が残る。このヌルヌルした感触は、石けんの場合でもすすぎに純水を用いると、合成洗剤と同じように残る。
これらのことから、石けんのさっぱりする感触は、水道水中に微量に溶けているカルシウムイオン(Ca2+)やマグネシウムイオン(Mg2+)が、皮膚に残留している石けん分子と結びついて、水に不溶性の金属石けんを生成するためと考えられている。」
井上勝也・彦田豪共著「活性剤の化学」裳華房
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