ニセ科学と石けんの諸問題 -「家庭用」軟水器の諸問題-

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石けんの特性と石けんカス

「硬水・軟水」とは、その水で石けんがどのくらい泡立つかの目安として決められた区別なので、毎日の生活と密に関係した言葉です。一般に、水の硬度が高いほど石けんの泡立ちは悪くなり、使いにくくなります。

参照:石鹸百科・知識館・石鹸生活の資料 二価金属イオンが洗濯用洗剤に及ぼす影響別ウィンドウで別サイトを開きます

硬度90ppm以上の水を用いて石けんで洗たくを行う場合は、以下の諸点を考慮する必要がある。

  1. 硬度成分は金属石けんを生成するので、洗浄に寄与する石けん分が減少するから、石けん濃度は硬度消費分を見込んで使用する必要がある。
    2RCOONa + Ca2+  → (RCOO)2Ca + 2Na+
  2. 生成した金属石けんが洗たく物に付着すると変色、風合、光沢を害するから、すすぎを入念に行わねばならない。
  3. 洗たく機に金属石けんが沈積すると機械作用を低下し、洗たく液中に混入して洗たく物を汚染する場合があるから、洗たく機の手入れを入念に行う必要がある。

吉永フミ・多田千代・西出伸子共著「新版 被服整理学 その実践」光生館 から
「洗濯での石けん使用における硬度の影響について」

水に石けんを溶かすと、まずカルシウムやマグネシウムイオンが素早く石けん分に取り付いて金属石けん(石けんカス)に変化させます。つまり石けんは全ての硬度成分と反応し終わった残りの力で汚れに働きかけているわけです。従って、硬度が高いと投入した石けんの多くが硬度成分に取り付かれて洗浄力を失うため、その分を見込んだ量を使わなくてはなりません。その点、軟水なら硬度成分に取られる量が少ない分、石けんが効率的に使えて総使用量も減るのです。軟水器で石けんカスが減るという宣伝は、金属石けんに話を限れば正しいと言えます。

しかし、石けんカスには「酸性石けん」というものも含まれます。これは軟水器でも防げないうえ、軟水器業者がこぞって勧める純石けん(アルカリ剤無添剤の石けん)は炭酸塩入り石けんよりも酸性石けんが生成されやすいのです。それはなぜでしょうか。

石けんは、以下のような性質を持っています。

  1. 薄まると汚れを手放す
  2. 酸に弱い
  3. ミネラルに弱い
  4. 冷水には溶けにくい

石鹸百科・知識館・石鹸とは これだけは知っておきたい石けんの特性別ウィンドウで別サイトを開きます

石けんは、弱酸である脂肪酸と、強塩基であるナトリウムあるいはカリウムと結合してできた化学物質で、水に溶けたときその一部が次のように加水分解して、水溶液は弱アルカリになります。

RCOONa + H2O → RCOOH + Na+ + OH-
石けん + 水  ←   脂肪酸 + ナトリウムイオン + 水酸化物イオン

加水分解で生じた脂肪酸は、石けんと結合して、べたべたして水に溶けない酸性石けんとなります。

RCOOH + RCOONa → RCOOH・RCOONa
脂肪酸   石けん   ← 酸性石けん

つまり、軟水器で硬度成分を取り除いても、洗濯液が酸性に傾きすぎたり、石けんの量が汚れに対して足りなければ酸性石けん=石けんカスができます。そして衣類の汚れは概して酸性なので、汚れがひどいときほど酸性石けんができやすくなります。

参照:石鹸百科・知識館 石鹸カスとは別ウィンドウで別サイトを開きます

酸性の強い温泉などで石けんを使った人は、石けんがベトベトしたものになるのを経験したことがあると思う。これは石けんを酸性の水で使うと、石けんが酸と反応してもとの脂肪酸に戻るからである。

(井上勝也・原田毅共著「活性剤の化学」裳華房)

しかし、汚れに見合った量の石けんを正しく使い、洗濯液を洗浄に最適なpH範囲(pH9.0〜10.5)に保つ働き(アルカリ緩衝効果)のある炭酸塩の存在があれば洗濯液は極端に酸性に傾かないので、酸性石けんはできにくくなります。ですから軟水器を使う場合も、純石けんではなく炭酸塩添加の石けんを使う方が理にかなっています。

また、軟水器は「冷水には溶けにくい」対策にもなりません。

合成洗剤はセッケンに比べて温度依存性が小さく、またJIS規格による洗浄力試験も30℃の温度が規定されている。したがって実用洗濯では浴温30℃で十分であると考えてよい。
しかし家庭洗濯で最も除去が困難であるとされている皮脂よごれの洗浄では、40℃あるいはそれ以上の温度も必用である。粉セッケンを使用する際には合成洗剤よりもやや高温浴を用いるのがよいと思われる。

―中略―

日本は水質に恵まれているため欧米諸国のような高温洗濯をすることが少なく、洗濯温度は水温に左右される。冬期では水温は10℃あるいはそれ以下となるので、汚れの落ちがわるく、布に残留して洗浄率を下げることになる。したがって、冬期では浴温を30℃くらいまであげる必要がある。特に粉セッケン使用の場合では浴温に留意しなければならない。

奥山春彦・皆川基編集「洗剤・洗浄の事典」朝倉書店

一般に、汚れは温度が高いほどよく落ちます。これは、温度が高まると汚れ自体が変化して溶けやすくなったり、膨張して取れやすくなったり、また洗剤成分自体の働きも熱エネルギーによって活発になったりするためです。最近の洗剤は、低温でも汚れ落ちがよいように工夫されていますが、それでも冬の寒い時期になると、例えば東京では水道水の温度が5℃近くまで下がるため、どうしても十分な力が発揮できません。

花王生活文化研究所編「洗濯の科学」裳華房

つまり、合成洗剤にしろ石けんにしろ、よく溶かして洗浄力を効果的に発揮させたければ水温30℃以上が必要で、それは軟水器があろうがなかろうが関係ないということです。

一般家庭でよく行われているお風呂の残り湯での洗濯は大変理に適っており、しかも節水に役立つ良い方法です。残り湯は皮脂などで汚れているため、さら湯よりも石けんカスができやすくなっています。洗濯に利用する際には必ず炭酸塩配合の石けんを使うようにしましょう。

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