ニセ科学と石けんの諸問題 -「家庭用」軟水器の諸問題-

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家庭用軟水器と無添剤石けん

本来は業務用器機である軟水器が一般家庭用として話題になりだしたのは1997年10月頃。シャボン玉石けん株式会社(以下、シャボン玉石けん)が、ボイラー用軟水器の大手・三浦工業と手を組み、「家庭用」軟水器の販売を始めたのです。なぜ、軟水国の石けんメーカーが軟水器を売らねばならないのでしょう。

シャボン玉石けんは無添剤を売り物にしているため、石けんの洗浄力を強力にサポートし、環境負荷の少ない炭酸塩を自社製品に配合していません。その上、同社の粉石けんは正しく洗浄力を発揮させるには最低でも水温40℃以上が必要な原料(牛脂、パーム油)を使っているため(*3)、溶け残りによる黄ばみや臭いなどの問題が起こりやすく、家庭では使いにくい製品に仕上がっています。

その使いにくさは、炭酸塩を粉石けんに添加するだけでも相当に改善されます。しかし「無添加・無添剤こそ高品質の証」として他社との差別化を図ってきた手前、今さらそれはできない。そうなると、後は石けんを溶かす水を変えるしかない――このような状態であったシャボン玉石けんと、業務用だけでなく家庭にも軟水器を売り込みたい三浦工業の思惑が一致して、「家庭用」軟水器の販売を始めたのだと推察されます。価格は決して安くはなく、メンテナンスフリーの自動型だと一戸建て用が数十万円、風呂用でも十万円以上します。購入以後も、メンテナンスや消耗品の購入などで年間に数万円の出費が必要です。

当たり前の話ですが、軟水国である日本の一般家庭において、軟水器の需要は非常に低い。しかし、売らなければならない。そこでやり玉に挙げられたのが「硬度成分の害」です。カルシウムやマグネシウムなどのミネラルがいかに肌に悪いか、石けんを無駄に喰うかを言い立てれば、「軟水器は環境に優しい」とアピールできるというわけです。

純石けんは使う水によっては本来の洗浄力を単独で発揮し、排水した跡も自然分解するので環境にやさしい、添加物の心配もない洗濯のベストパートナーです。硬水中のミネラルがじゃまをして石けんを使いにくくしているので軟水にすればこの問題は解決します。

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このように、多くの軟水器業者はまず「純石けん」「無添加石けん」という「体や環境に良さそう」で、しかし使いにくいものを紹介し、そして「軟水器があれば大丈夫」と勧めています。これはマッチポンプ商法(*4)そのものです。また、そのようなセールストークは、ふっと思い立って石けんをひとつ買ってくる、それだけでスタートできる石けん生活を「軟水器を買わなければ始められない」と誤認させ、消費者に対し石けんを必要以上に難しいものに思わせてしまう弊害もあります。

純石けんでも少量でよく泡立つので、洗剤代が節約できます。しかも純石けんだと、ウールもシルクも自宅で洗えてとっても便利

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水道水で無添加石鹸を使うのはほんとうに大変です。でも、できるだけいい石鹸を選んで、軟水で洗えば、なんの苦労もありません 

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洗濯用の純石けんは、もともと絹やウールのようなデリケートな繊維を優しく手洗いするためにあるような製品で、それを毎日の洗濯に使うのは、絹のハンカチで雑巾がけをするようなものです。そんなことをすれば確かに「ほんとうに大変」ですが、それは製品の選び方と使い方が間違っているからであって、硬度成分のせいではありません。その上、シャボン玉石けんや三浦工業が勧める洗濯用純石けんは原料油脂の成分から見て高温洗濯向きですから、ウールや絹の洗濯に適した30〜35℃のぬるま湯(*5)では洗う力を十分に発揮できず、使われた石けんのかなりの部分が無駄になります。それは軟水器を使っても変わりません。

参照:洗濯用「無添剤」石けんの問題点

*3 シャボン玉石けんの純粉石けん

「シャボン玉スノール」には、かつては「作業着の汚れのひどいものは、熱湯(50〜60℃)でご使用ください」という表示があった。これは高温でないとこの粉石けんが充分に機能しないことをメーカー自身も認めていたことを裏付ける。なお、そのような温度は洗濯機の故障の原因になると消費者団体に指摘され、以後この表示は削除されている。
※石けんの溶解度については、脂肪酸組成と石けんの性質別ウィンドウで別サイトを開きます各種脂肪酸石けんの溶解度別ウィンドウで別サイトを開きますをご参照ください。

*4 マッチポンプ商法

「自分でマッチで火をつけて、自分でポンプで水をかけて消す」ことから、わざと問題を作り出した後でそれを解決するような商品やサービスを販売する悪質な商法のこと。

*5 ウールや絹を洗う場合

低温でも洗浄力も発揮する脂肪酸(オレイン酸・ラウリン酸)を多く含む米ぬか油・ヤシ油主体の石けんが適している。

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