脂肪酸組成と石けんの性質
■ 飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸
油脂は、1個のグリセリンと3個の脂肪酸がエステル結合した物質(トリグリセリド)からできています。1個のグリセリンと結合している3個の脂肪酸は、同じ種類ではなく、いくつかの種類が混在していることが普通で、天然の油脂は、そうしたいろいろな種類のトリグリセリドの混合物です。
脂肪酸は、鎖式炭化水素(炭素が鎖状に結合したもののまわりに水素が結合したもの)から水素が1個とれた鎖式炭化水素基に、1個のカルボキシル基(-COOH)が結合したものです。
一般に鎖式炭化水素基のことをアルキル基と呼ぶことが多いのですが、正確には飽和炭化水素基のことだけを指すようなので、正確を期すために、ここでは鎖式炭化水素基という用語を用います。
鎖式炭化水素のうち、炭素数の多いものを「高級」、炭素数の少ないものを「低級」といいます。
炭素数の多い脂肪酸は「高級脂肪酸」、炭素数の少ない脂肪酸は「低級脂肪酸」です。
−Note−
ちなみに、アルコールは、鎖式炭化水素基にヒドロキシル基(-OH)が結合したものですが、同様に、炭素数の多いアルコールは「高級アルコール」、炭素数の少ないアルコールは「低級アルコール」といいます。「高級アルコール系洗剤」というものを、品質の高級なアルコールから作られた洗剤だと誤解している人がいますが、品質が良いということではなく、炭素数の多いアルコールから作られた洗剤、という意味なのです。
1個の炭素原子は、他の原子と結合できる4本の手を持っています。炭素原子どうしが、すべて互いに1本の手で結び合っている(単結合)化合物を「飽和」、2本の手で結び合ったり(二重結合)、3本の手で結び合ったり(三重結合)している部分を含む化合物を「不飽和」といいます。
単結合のことを「飽和結合」、二重結合や三重結合のことを「不飽和結合」ということもあります。
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| 図1 ステアリン酸の構造式 |
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| 図2 オレイン酸の構造式 |
ステアリン酸の構造式に見られるように、炭化水素基が単結合だけでできている脂肪酸を「飽和脂肪酸」とよびます。オレイン酸のように、炭化水素基に1個以上の二重結合を含む脂肪酸を「不飽和脂肪酸」と呼びます。(上図2の矢印部分参照)
脂肪酸の融点は、不飽和度が同じであれば、高級(炭素数が多い)なものほど高く、炭素数が同じであれば、不飽和度が高いものほど低くなります。
融点の低い脂肪酸を多く含む油脂は、常温で液体(油)であり、融点の高い脂肪酸を多く含む油脂は、常温で固体(脂)になっています。
飽和脂肪酸の石けんは、酸化されにくいという特徴があります。低級(炭素数が少ない)なものは、低温の水にも比較的溶けやすいのですが、高級(炭素数が多い)なものは、低温の水にはほとんど溶けず、高温のお湯でなければ溶けないという欠点があります。
不飽和脂肪酸の石けんは、二重結合が単結合に比べて水分子との親和性が良いため、低温の水にも良く溶けるのですが、二重結合の部分が酸化されやすいという欠点があります。
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