合洗は1ppmでも生物に有害

合成洗剤とせっけんをくらべると、合成洗剤の方が優れていると誤解されそうな点が一つだけあります。それは合成洗剤はどんなにうすくなっても、水と油をまぜあわせる力がなくならないという点です。それに比して、せっけんは濃度がうすくなると、とたんに力がなくなります。一定の濃度のもとでは、せっけんの方が合成洗剤より洗浄力が強いことは公然の事実ですが、合成洗剤はほとんど0%に近づいても力が残っているのに、ソ-ダせっけんでは0.06%、カリせっけんでは0.3%でほとんど力がなくなります。このためカリせっけんなどでは再汚染(一度落ちた油がすすぎの段階でもう一度皿などに付いてしまう)がおこります。

しかし人が使用する場合、使い方さえ気をつければ、せっけんの方が洗浄力が強いので問題はありませんが、環境に出た場合は、このせっけんの欠点と考えられる点が美点となり、合成洗剤の利点と考えられる点が、実は合成洗剤の諸悪の根源なのですから皮肉なものです。

環境では洗浄剤は相当うすまっています。10ppmなんてめったにありません。これは0.001%になりますからせっけんはまったく力がなくなります。合成洗剤は1ppmでも水棲生物に影響を与えます。特に海ではせっけんは溶けませんからまったく無害で、魚の餌になる位です。合成洗剤は海水にも溶けて1ppm以下でも生物に有害になります。

※このコーナーでは、石川貞二さんの文章をそのまま掲載しています。当「石鹸百科」とは異なる見解が含まれていることがあります。