合成メーカーのマッチ・ポンプ商法

主婦の手荒れが、合成洗剤のせいであることを、合成洗剤のメーカーはよく知っているのです。それが証拠には、今頃になって「これなら手が荒れません」という製品を堂々と売出しています。ルナマイルドだとか、ママローヤルだとかいうもので、俳優の夫人などがテレビでうれしそうに「手荒れがなくなりましたわ」などと宣伝させられていますが、あれだって今までチェリーナやママレモンを使っていた人には、少しは楽なのでしょうが、せっけんを使っている人には、相当悪いものです。

家人など、ママローヤルをためしに一度使ってみただけで、一週間以上手がガサガサになってしまいました。この人は、実に合成洗剤に敏感な人で、私が動物実験でテストを頼まれる洗剤類を、まず家人に使ってもらいますと、見る間に結果が出てしまいます。一番たしかな実験方法なのですが、テスト結果として、依頼者に報告しても、あまり高く評価はしてくれません。

現在、ほとんどの主婦が、ハンドクリームを使っているといわれています。ハンドクリームにも問題はありますが、いちおう脂肪を補うという意味で、合成洗剤で荒れた手にとっては、役に立つ面もあるのでしょう。そして今日本中で一番沢山売れているハンドクリームは「ニベア」だそうです。ご存知『花王石鹸』の製品です。わが国では、こういう商法をマッチ・ポンプと称します。消防士が放火をしているのです。

ここで出てくる家人というのは、12年前に離婚した前の配偶者のことです。この頃よりも数年前から、一緒に合成洗剤追放運動をしていた下村薫さん(現石川貞二夫人)が、口を酸っぱくして合成洗剤の害を説いても、なかなか止めないで相当頑固に抵抗していましたが、ある日こっそり家中の合成洗剤を全部捨てて石けんに変えてしまったら、やむを得ず石けんを使うようになり、結果は本文のとおりでした。

毎年厚生省が皮膚科の医者からアンケートを取っていますが、皮膚科に掛かる原因の第1位は常に合成洗剤です。大分前から、手荒れ防止剤を添加してある台所用の合成洗剤が出回っていますが、手が荒れなくても、皮膚から合成洗剤が浸透して、内蔵障害を起こすことに変わりないし、環境に出て弱い生物を殺すことにも変わりありません。

※このコーナーでは、石川貞二さんの文章をそのまま掲載しています。当「石鹸百科」とは異なる見解が含まれていることがあります。