石けん百科トップへ 本館入門編基礎知識編実践編アルカリと洗浄達人洗濯講座石けんライフのQ&A石けんライフのパートナーたち理論編
別館合成洗剤の基礎知識鳥羽の海から資料編
参考図書リスト石けん楽会(BBS)究める広場(BBS)リンク会社案内メールマガジンバックナンバー百科&百貨通信石けん百貨(通販)
目次 合成洗剤の基礎知識

● 安全な洗剤?セールストークのウソ・ホント

石けんでも合成洗剤でもない「オーガニック洗剤」?

「家庭用品品質表示法では、石けんと合成洗剤の分類しかないのでこの洗剤は合成洗剤という表示になってしまいますが、天然原料で作られたこの洗剤は石油系の洗剤とは違うので『オーガニック洗剤』と区別して呼ぶのです」というような説明を、良く目にします。でも、家庭用品品質表示法では、なぜ「石けん」と「合成洗剤」を区別しているのか、その根本に帰って考えてみると、この説明の奇妙さに気づくはずです。

家庭用品品質表示法で、界面活性剤の種類が「石けん」か「それ以外」かで表示を区別しているのは、「天然系原料」かどうか、とか、生分解性が良いかどうか、とかいうことに注目しているのではなく、石けんとそれ以外の合成界面活性剤とは性質が全く違うということに注目しているからです。石けんは薄まれば界面活性を失うので、すすいだ後の肌の上や、薄まった排水の中では、もはや界面活性剤ではなくなっているのです。これが、石けんが手あれを起こさず、川や海の生物にも安全である最大の理由です。他の合成界面活性剤には、このような性質はなく、薄めても薄めても界面活性が残ります。このために、肌への悪影響や、水生生物への害が起きてくるのです。「オーガニック洗剤」と呼ばれるものに入っているのは、まぎれもなく、そのような合成界面活性剤です。

天然系100%の洗剤?

「天然系素材を100%使用した洗剤」というのがあります。この謳い文句を聞けば、天然に存在する物質だけが含まれているものだと思うでしょう。でも本当でしょうか?

洗剤には界面活性剤が配合されています。確かに、天然に存在する界面活性物質もあります。卵黄や大豆に含まれるレシチン、各種の植物に含まれるサポニンがそうです。しかし、こうした天然界面活性剤は洗浄力が弱いので、商品としての洗剤に使うのは無理です。「天然系100%の洗剤」に配合されている界面活性剤は、「脂肪酸系」や「アミノ酸系」や「ベタイン系」だということです。「脂肪酸」や「アミノ酸」や「ベタイン」は天然に存在する物質です。でも「脂肪酸系」や「アミノ酸系」や「ベタイン系」の界面活性剤は、そうした天然の物質を原料として化学合成されたものなのです。「天然系」という言葉の表しているものは、「天然に存在する物質」ではなくて、「天然に存在する物質を原料として化学合成されたもの」なのです。「天然素材100%」ではなく「天然系素材100%」だというのは、実に巧妙な言葉のトリックだといえないでしょうか。

植物性だから安心?

石油から作られたものは危険、ヤシ油などの植物性原料から作られたものは安心、という考え方がありますが、本当にそうでしょうか?

ヤシ油から作られたという台所用洗剤の成分を見てみると、「アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム」とか「アルキルアミドプロピルベタイン」とか「脂肪酸アルカノールアミド」とか書いてあります。

「アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム」は、化学式で書くとR-O(CH2CH2O)nSO3Naというものです。はじめの「R」は「アルキル基」といって、ヤシ油由来のものです(石油からも同じものを作ることができます)が、その後ろの「-O(CH2CH2O)nSO3」は石油由来のものです。「100%植物性」どころか、植物由来の部分は、多く見積もってもせいぜい30%程度。植物性という言い方自体、心もとないということが分かります。

そして、何より大事なことは、安全かどうかを決めるのは、原料が何かということではなくて、その物質そのものが何であるかということです。石油から作ろうとヤシ油から作ろうと、「アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム」であることに変わりありません。石けんに比べて生分解は遅く、魚に対する毒性は強いのです。

薄めて使うから割安?

高価に思えても薄めて使うから実は割安、をセールストークにしている洗剤があります。 でも、家庭で薄めて保存している洗剤に、雑菌が繁殖したりしないのでしょうか? 石けんの場合、弱アルカリ性で細菌が繁殖しにくいのですが、中性洗剤の場合は、殺菌剤などを加えない限り、雑菌の繁殖のおそれがあります。 実際、大手の洗剤メーカーに問い合わせてみると、薄めた洗剤は保存せずにすぐ使い切るようにと言われます。

それ以前に、そもそも、台所用合成洗剤というものはどのメーカーのものであれ、薄めて使うことになっているのです。(標準使用量は水1リットルに0.75ml、というように決められていて、原液のまま使うことにはなっていません。)「この洗剤は他のと違って、薄めて使うから割安」というのはおかしいのです。

使うことで下水や環境水を浄化する洗剤ってホント?

使えば使うほど環境を浄化する洗剤と謳っているものがあります。どんな洗剤であっても、洗剤を使って洗うということは、大なり小なり水を汚し、環境に負荷をかけることです。洗剤を使えば使うほど環境を浄化するというのはおかしな話です。成分の中に有用微生物が入っているから環境を浄化するのだと説明されていますが、洗浄成分は合成界面活性剤で、環境に負荷をかけるものです。

石けんよりも生分解性が数倍優れている合成洗剤?

石けんよりも生分解性が数倍優れていると謳っている合成洗剤があります。「数倍優れている」とはどういう意味でしょうか?

分解には「一次分解」と「究極分解」があります。「一次分解」というのは、界面活性剤としてはたらかなくなるところまで分解されることです。石けんは、薄めると加水分解して界面活性剤としてはたらかなくなりますから、一次分解は一瞬のうちに終わると言えます。一次分解の速さでは、石けんの右に出るものはありません。

「究極分解」は、完全に無機物(水や二酸化炭素)になってしまうことです。これも、石けんの場合はとても速いのですが、石けんと同じ程度に究極分解の早い合成界面活性剤も、最近は増えてきました。でも、「石けんと同じ程度」ということで、数倍速いということはあり得ません。

良く話を聞いてみると、どうも、石けんを1回使用するときに排水に流れる有機物量が、その合成洗剤の場合より数倍多いということを言っているらしいのです。確かに、粉石けんは「スプーン1杯」では洗濯できませんから、有機物量が3倍ぐらいになるでしょう。でも、量が3倍なら分解にかかる時間も3倍、というのは間違いです。もし分解されるときの減り方が直線的だとしたら、量が3倍のとき分解にかかる時間も3倍になるでしょう。でも、1日ごとに半分半分と減っていくような減り方なら、グラフで書くと、直線ではなくへこんだ曲線(数学の言葉では対数関数)になります。このときは、量が3倍でも分解にかかる時間は3倍にはなりません。
グラフの青線は、赤線よりも3倍の濃度から出発して、1日ごとに半分半分と減っているのですが、赤線を右に約1日半ずらすと、青線にぴったり重なることがわかります。つまり、分解にかかる時間は3倍になるのではなく、約1日半遅くなるだけなのです。

数学で考えるとこういうことになりますが、実際に石けんや洗剤が排水の中で分解される様子は、直線的ではなく、このグラフのような減り方なのです。「石けんよりも生分解性が数倍優れている合成洗剤」というのは、どうにも理解ができません。

石けん百科トップへ
合成洗剤の基礎知識トップへ